映画『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』
いい機会なのでビリー・ホリディの伝記映画『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』も観た。原題は『Lady Sings the Blues』、やはりアメリカで『Strange Fruit』とするのは問題が多いのだろうか。
1972年製作、主演はダイアナ・ロス、製作はモータウンのベリー・ゴーディ、音楽はミシェル・ルグランで、いかにもルグランらしいストリングスが要所に聞かれる。
どうしても先日紹介した『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』と比べてしまうが、かなり端折ったストーリー展開で、これだけ観てビリー・ホリディはこういう人だったと言うには随分イメージ違うなと。これでも’72年当時にしてはかなり頑張ったのだろう。
この映画の元となった自伝『奇妙な果実 -ビリー・ホリデイ自伝』は既読であるが、実際のビリーは初めての売春年齢のサバを読む(?)ようなこともあったと聞く。その方がセンセーショナルに響くと思うとサービスする気質があったのかもしれない。(マイルス・デイヴィスの奥さんにクインシー・ジョーンズが指輪を贈ったとマイルス自叙伝に書いてあるが、クインシーがそんなことはないと食ってかかると「そのほうが読んでて面白いだろ」とマイルスが言ったとか。多少盛って語るのがジャズメン気質なのか)
華奢でマシュマロヴォイスのダイアナ・ロスが骨太で肝の据わったビリーを演じようって言うのだからたいへんだ。
最初からビリーの面倒をよくみてた”ピアノ弾き”が麻薬の売人に殺されてしまうのだが、このピアノ弾きが役名も”ピアノ弾き”で、いったい誰なのか?最初テディ・ウィルソンかと思ったが、彼は’86年まで生きてる。役名も無いほどだから適当にでっちあげたオリジナルのキャラクターなのかもしれない。
ちなみにレスター・ヤングは登場しない。不倫関係にあったというベニー・グッドマンも登場しない。『ベニー・グッドマン物語』で好感度高かったから、これも問題あるんだろうな。10点中4点。
映画『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』
なんと、ビリー・ホリディの映画があるではないか。しかも2本、全然知らんかった。むかしダイアナ・ロス主演で「ビリー・ホリディ物語」というのがあったが、これもチャンスがなくて観ていない。わたしは気の強そうな女性シンガーが苦手なので、ビリーとかカーメン・マクレエには詳しくないのだ。
一本はドキュメンタリーの『Billie ビリー』、こちらは配信がなく、配信がある方の『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』を観た。
ちょっとこのタイトルはダサいんじゃないかと思う。ストレートに『奇妙な果実』ではいかんかったのか。まだ問題あるのかな?
さてストーリーはともかく、主演のアンドラ・デイがビリーにそっくり!顔や体格は小ぶりであまり似てないなと思って観てたら、歌声はもちろん、「電話帳を読むだけでジャズになる」とまで言われた話し方が本当にそっくりで、本物かと錯覚しそうになる。
のっけからルイ・アームストロングと共演、サッチモの声マネはまあ誰でもできる(?)が、問題はトランペットの音色である。あの天下一品の艶やかな音色は再現不可能でスルー。ま、ビリーの映画なのでそれは許す。
さあ、ビリーといえばプレズことレスター・ヤングで、トレードマークのポークパイハットをかぶって頻繁に登場するが、少し貧相で大物感ゼロ、テナーも含め残念、ま、ビリーの映画なのでこれも許す。
バンドの頭数と出てくる音が合ってなかったり、『レディ・イン・サテン』のジャケットが登場した随分あとで同盤のレコーディングがあったりと、マニアが見たらツッコミどころは多々あるけれど、かなり頑張ったのは伝わってきた。ジャズ伝記映画として採点するなら10点満点中8点。ちなみにイーサン・ホーク主演チェット・ベイカーの『ブルーに生まれついて』は9点、マイルスの『マイルス・アヘッド』は3点(^^;
コルトレーンポマード

コルトレーンの名を冠したポマードがニュージーランドより上陸。他の物はともかく、当店がこれを取り扱わずしてどうするのだ!?
というわけで、入荷しました。ポマードといってもクレイ(粘土)なので、マットで上品な仕上がり。材料に良いもの使ってるなというのがビンビン伝わってまいります。
ホールド力はミディアムでツヤなし。匂いはキツくなく微香性。
「オレが買わずしてどうするのだ!?」と思った方はお早めにどうぞw
秘すれば花
久しぶりにニコラス・ケイジの映画を観たら、主人公なのにほとんど喋らないので驚いた。さすがである。
600年前「秘すれば花」と世阿弥はいった。映画においていちばんダメなのは、心情とか状況をセリフで説明しちゃうことなんである。映画にかぎらず、あらゆる芸術表現は、全てをつまびらかにして正確に伝えることではなく、相手に「感じさせる」「想像させる」ことが最も重要なのだ。
音楽鑑賞あるいはオーディオが、画のない不完全な形態にもかかわらずホームシアター等とまた違った、独立した高次元ポジションを得ているのも、リスナーに想像させ、世界観を感じさせるに最適な形態だからだろう。
わたしが10代のころは、アメリカ村のフィフティーズ風ブティックがお気に入りで、ロックンロールのBGMとピンクに塗られたベニヤ板の壁の向こうに「アメリカン・グラフィティ」の世界が広がっている気がしてワクワクしたものだった。
ベニヤ板を蹴破っても心斎橋の風景しか広がってないのだが、そんなふうに臨在する世界を想像させることこそブランディングなのだ。
インターネットの普及によって、何でもかんでもググれば分かるようになったから、今後は逆にググっても出てこない情報のほうが貴重になってくるだろう。
JimmyJazzも「知る人ぞ知る」とか「伝説の」と噂されるには、これまでのようにジャンジャン発信する姿勢は慎んだほうがいいのかも?(^^;
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