ピート・ラ・ロカ(ds) 『Basra』


ピート・ラ・ロカ(ds) 『Basra』

 現代のように海外旅行もままならなかった1965年当時、ヨーロッパ以外の国々、たとえばイスラム圏や東洋のオリエンタリズムに憧憬を抱くアメリカ人は多かったようだ。ジャズにおいても、伝統的なヨーロッパ的価値観からの脱却を目指すミュージシャンが増えつつあった。本盤もちょうどそうした流れにあったブルーノート新主流派を代表する傑作のひとつ。呪文のように繰り返される[1]、新しい切り口のブルースナンバー[2]、イラクの港をイメージした表題曲[4]など、決してヨーロッパ的でなく、かつストレートなジャズが炸裂する。 ★★★★

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 マイルス・デイヴィス(tp) 『死刑台のエレベーター(Ascenseur Pour L'echafaud)』


マイルス・デイヴィス(tp) 『Ascenseur Pour L'echafaud』

 物凄い演奏だ。トランペットの音色がここまで力を持っているとは。しかし、あまりにも、暗い。真夜中にこれを聴いたら自殺者が出るんじゃないかと心配になる。恐ろしいまでの閉塞感。ただでさえ暗いのに別テイクが何度も繰り返されるから余計に気が滅入る。軽く聞き流せばいいようなものだが、そうはいかない。かけるたびマイルスの魔力によってハードボイルド世界に引きずり込まれる。昨日も店でかけてたら、案の定お客さんも一緒になって暗くなってしまった。(笑)輸入盤あり ★★★★

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 マイルス・デイヴィス(tp) 『Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextett』

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マイルス・デイヴィス(tp) 『Miles Davis And Milt Jackson Quintet/Sextett』

 「マイルス、なんでアートにはオレのように辛くあたらないんだ!?」そう言って、レコーディング中だというのにスタジオを出て行ってしまう激情のジャッキー・マクリーン。よって[2]と[4]はマクリーン抜きのクインテット演奏。ビビリながらもリズムをキープするアート・テイラー。ブロックコードのバッキングに抜群のセンスを見せる寡黙な新人レイ・ブライアント。しゃかりきになってマレットを振るうミルト・ジャクソン。このセッションに漲る緊張感をもたらしたのはマクリーンだ。 ★★★★

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 グローブを買ってくれとアイツは言った

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 モンティ・アレキサンダー(p) 『Montreux Alexander Live!』


モンティ・アレキサンダー(p) 『Montreux Alexander Live!』

 [6]に歌詞をつけて唄うとすれば、「ゴンベさんの赤ちゃんが風邪ひいた」がオーソドックスで、わたしなら「おたまじゃくしは蛙の子」。ハイカラさんなら「グローリーグローリーハレルヤ」か。ひょっとすると若い人は「ヨドバシカメラの唄」だと思ってるかもしれない。重量級のピアノの音をガッツーン!と聴かせるモンティ・アレキサンダーの、スイスで行われたモントルゥー・ジャズ・フェスティバルでのライブ。クリアーで迫力ある低音弦の響きはMPSレーベル得意のお家芸。よく知られたスタンダード曲をノリノリで弾きまくり、会場は興奮の坩堝と化している。  ★★★★

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 マイルス・デイヴィス(tp) 『Water Babies』

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マイルス・デイヴィス(tp) 『Water Babies』

 ジャケットのあやしげなイメージは『オン・ザ・コーナー』あたりの電化マイルス時代を連想するが、中身はストレートアヘッドなジャズ。コロンビアが遅れてリリースしたためか、内容とジャケットがややちぐはくな印象だ。特に前半はウエイン、ハービー、ロン、トニーといった”黄金のクインテット”時代の録音だけあって実に素晴らしい。しかし本盤のハイライトはなんといってもゴキゲンなロックンロール調の[5]。ん~、カッコイイ! ★★★★

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 ビックス・バイダーベック(cor,p) 『Singin' the Blues』

ビックス・バイダーベック(cor,p) 『Singin' the Blues』

  本盤をかけていたら、お客さんに「これはいくらなんでも古すぎる」と言われた。それもそのはず、なんと1927年の録音。当店所蔵の音源のなかで、おそらく最も古いものだ。”コルネットの王様”ビックス・バイダーベックは、ルイ・アームストロングと並ぶジャズ創世記の大立て者。ピアノもなかなかの腕前で、[12]ではモダンなソロピアノを聴かせる。サウンドとしてはディキシーランドのスタイルだが、どことなくニューヨークの洗練された感覚を感じる。若き日のジミー・ドーシーもセッションに名を連ねているようだ。 ★★★☆☆

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 スタン・ゲッツ(ts) ジョアン・ジルベルト(g,vo) 『Getz/Gilberto』
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スタン・ゲッツ(ts) ジョアン・ジルベルト(g,vo) 『Getz/Gilberto』

 ボサノヴァを世界に広めた本盤の功績は計り知れない。転調を間に挟み天才的なフレージングを聴かせる[6]のゲッツのソロは何度聴いても素晴らしい。続く[7]では横隔膜を震わせる泣きのイントロ。大きく息を継ぐ「フゥ――ッ」という音が入ってる。ジャズはこれだよなぁ。あまりにも有名な傑作ゆえ、難癖をつける人も跡を絶たないが、それらはすべて「後付け」の理屈であって、本盤の輝きを些かも減じるものではない。ジョアン・ジルベルトの歌声こそ究極の癒し。輸入盤あり ★★★★★

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 ペギー・リー(vo) 『Latin ala Lee!/Ole a la Lee』
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ペギー・リー(vo) 『Latin ala Lee!/Ole ala Lee』

 スタンダード曲をラテン風アレンジで仕上げた『ラテン・アラ・リー』と『オレ・アラ・リー』二枚のLPをカップリングした2in1CD。海辺のリゾートを思わせる乾いたサウンドが心地良い。[7]を聴いていると、夜の砂浜に燃える松明の火が目に浮かぶ。余談だが、家内と初デートの日に、本盤の[1]を景気つけに聴いて出かけた。その日のうちに「結婚してくれ」といったら撃沈された。いや、まったく余談であった。失敬失敬。 ★★★★

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 ウイントン・ケリー(p) 『Kelly Great』

ウイントン・ケリー(p) 『Kelly Great』

 良いジャズミュージシャンは何でもないようなブルースが例外なくうまい。ウイントン・ケリーはその最右翼だ。一曲目にその何でもないようなブルースナンバーを持ってくる。いやー、これが良い!知らないうちに乗せられてしまう。ハードバップ調の[2]、粋な節回しのモーガンのミュートトランペットに続いて登場するショーターのヌボーとしたテナーが痛快な小唄[3]など、一見地味な選曲ながら味わい深い内容の一枚。 ★★★★

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 「A&Vヴィレッジ」5月号発売

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 Masterはジャズがお好き?

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 ハービー・ハンコック(p) 『Quartet』


ハービー・ハンコック(p) 『Quartet』

 ハービー、ロン、トニーというV.S.O.P.のリズムセクションにウイントン・マルサリスを加えたカルテットによるスタンダード集。2枚組みLPだったのが一枚のCDに収録されている。いやあ、本作のウイントンのトランペットには心底参った!張りのあるトーン、見事なフレージング。こんなに易々と吹けてしまっていいものだろうか。「トランペットがうまい」というのはまさにこういうことなのだ。ロン・カーター作の[6]が特に素晴らしい。国内盤あり ★★★★

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 「仕事が趣味」は身体に悪い?!

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 ソニー・ロリンズ(ts) 『Way Out West』


ソニー・ロリンズ(ts) 『Way Out West』

 コッコチチコッコチチコッコチドン!コチチコッコッチチコッコチチコッコチドン! ピアノレス、それもサキソフォン、ベース、ドラムスのトリオとなれば、よほど腕に自信がなくては演奏できまい。コードを見失って何をやってるかすぐにわからなくなってしまうからだ。ロリンズは明快で強いメロディラインのアドリブを繰り出し、レイ・ブラウンはしっかりしたベースで音楽の根底を支え、シェリー・マンのパーカッシブな小技は西部の雰囲気をうまく演出している。ガンマンに扮したジャケット写真はロリンズ自身のアイデア。 ★★★★

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 ブルー・ミッチェル(tp) 『Blue's Moods』


ブルー・ミッチェル(tp) 『Blue's Moods』

 この一枚、いや、この「I'll Close My Eyes」一曲の名演を残したがゆえ、ブルー・ミッチェルの名はジャズファンの記憶に深く残ることとなった。ミッチェルはホレス・シルバー・クインテットのフロントとしても有名だが、本セッションではウイントン・ケリーの脳天気な側面と共鳴して、青空のように晴れやかな快演に仕上がった。あー、いい曲である。幸せな気分になれる。バラードの[6]はマイルスとの聴き比べも一興。 ★★★★

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 マイルス・デイヴィス(tp) 『Filles de Kilimanjaro』

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マイルス・デイヴィス(tp) 『Filles de Kilimanjaro』

 わたしがジャズを聴きはじめる前はジミ・ヘンドリックスに相当入れこんでた。ジミヘンとマイルスに交流があったことも当然知っていたので、ロック色の強い電化マイルスを主に聴いてはみたが、ジミヘンとの接点は見つけられずにいた。ひょんなきっかけで本盤と出会い、おお、これこれ!これが聴きたかったんだ!と小躍りした。『キリマンジャロの娘』。この頃の音楽シーンは、アメリカ、ヨーロッパ的なものから、東洋やアフリカ的なものへ全体が移行しつつあり、その断面にはジミヘンの影がチラチラ覗く。[5]を聴いてると、まるで極楽浄土に居るようだ。 ★★★★

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 エリック・ドルフィー(as,fl,bass-cl) 『Last Date』

エリック・ドルフィー(as,fl,bass-cl) 『Last Date』

 「音楽は聴いた途端、空気のなかに消えてしまう。もう二度と取り出すことはできない」あまりにも有名なキメ台詞を残して、この4週間後ベルリンで客死。糖尿病だったそうだ。フィアンセも居たというのに。オランダの現地ミュージシャンを集めての公開ライブ録音。凛とした空気を切り裂くフルートの名演[5]はドルフィーの最高傑作として名高い。ハンチング帽を被り、パイプを咥えた赤ら顔の白人の大男が拍手する姿を想像してしまう。 ★★★★★

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 ダイナ・ワシントン(vo) 『Dinah Jams featuring Dinah Washington』

ダイナ・ワシントン(vo) 『Dinah Jams featuring Dinah Washington』

 「定石ならこう来るな」という部分を敢えて外す、それがジャズの本質ではなかろうか。[2]の「サマータイム」を聴いてみてください。観客が「ウォー!」と言って喜んでる。つまり、「 キチンとしたもの」があって、それとの対比によって「粋」の概念が生ずるのだ、なーんてわけのわからないこと言うより先に本盤を楽しんでしまおう。”ブルースの女王”ダイナ・ワシントンとクリフォード・ブラウンをはじめとする西海岸オールスターによる熱気ムンムンのライブ盤。こいつは凄いぞ!! ★★★★★

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 ペギー・リー(vo) 『Beauty and the Beat!』
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ペギー・リー(vo) 『Beauty and the Beat!』

 「美女と野獣(Beauty and the Beast)」をもじった粋なタイトルだ。ジャズという音楽は、ロックのようにリズムに乗って身体を揺すると演奏できないのである。ここでのペギーは、ステージにしっかり足を踏ん張って微動だにしない。伴奏を務めるジョージ・シアリング・クインテットが軽快なビートを刻むのとは対照的に、彼女はじつに丁寧に、美しいメロディを唄い上げていく。よって、『Beauty and the Beat!』。[10]で「Don't Cry~」とペギーが唄い出すと、もう全身が溶けてしまいそう。 ★★★★★

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