音の佇まいを聴く

 昨日の50メートル離れて聴く男性にいたく感心したのは、人間の耳は元々直接音を聴くようにできてないからである。発音体即ちスピーカーの振動板から発される音をダイレクトに聴くより、発される音波が周りの物に衝突して反映された結果を、”音の佇まい”を聴くのがもっとも自然なリスニング方法なのだ。

 視覚に置き換えてみるとわかるが、人間の眼は発光体を直接見るようにできてない。太陽や炎、電球をじっと見ることってないでしょう。太陽に照らされた満月を見るように、発光体によって照らされたものを見るのが自然なのだ。

 実はスピーカーや、スピーカーユニット自体も直接音ではなく、関節音を聞かせるよう工夫された物が多い。ラジエーターのようなJBLの音響レンズは、ホーンから出た音をレンズにぶつけて拡散させるよう設計されているし、名機パラゴンもホーンから出た音が腹の出っ張りにぶつかって放射されるような形をしている。

 ハーツフィールドなんか、ユニットのすぐ前に遮るような衝立があって、音が迂回するような仕組みだ。もっとも、ホーンスピーカー自体、小さな振動板から発された音がラッパの内側をぶつかって増幅しながら外に出る仕組みなのだ。

 スピーカーから出た直接音を耳でダイレクトに捕らえるといった聴き方をしないで、部屋の中に現れる音の佇まいを鑑賞する。シャンプーの置き方だのフリースの上着をかけるだの、飾ったレコードジャケットの角度がどうこう言うなんて頭がおかしいんじゃないかと思うかもしれないが、音が何にどう反射するかは当店にとって重要な問題なのである(^^;


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