米英の微妙な関係

 ポピュラー音楽の発展において、英国と米国はひじょうに興味深い関係にある。アフリカから連れて来られた黒人奴隷を持った国アメリカで生まれたブルースは、同じ言語を話し、階級制度のあるイギリスの若者たちにどういう刺激を与えたのだろう。
「強い酒を喰らったような気がした」
 と、イギリス人であるブルースロックギタリスト、エリック・クラプトンは黒人ブルースを初めて聞いた体験を述懐する。

 イギリスにはブルースも奴隷も、カントリー&ウエスタンもカウボーイもいなかった。海を渡ってきたアメリカ文化は、イギリスで独自の進化を遂げる。イギリスの若者にとってヒーローであるマディ・ウォーターズらブルースプレイヤーも、アメリカ本国ではただのニガー扱い。
 反対に、黒人ジャズミュージシャンも白人にジャズは演奏できないとの逆差別をしていた。

 ’60年代後半、アメリカのクレイジーな黒人ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスが登場、イギリスに渡りセンセーショナルなデビューを果たす。これに衝撃を受けたマイルス・デイヴィスは逆にイギリスの白人ギタリスト、ジョン・マクラフリンを自らのバンドに招き入れ、ロック的なサウンドを模索する。
 アメリカの白人は黒人を差別して利用しようとするが、イギリスの白人は黒人をリスペクトしている。そんな微妙な関係性もあったに違いない。

 ジャズはアメリカだけで完結するものでなく、イギリス、ドイツ、フランス、ブラジル、スウェーデン、インドなど外国人の干渉があるところで面白いものが生まれている。ちょうど潮と潮がぶつかって渦巻きができるように。


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