憎みきれないろくでなし

 昨日のチェット・ベイカーの映画についてもう少し。映画だから「チェットはやっぱり麻薬をやめられませんでした」で、チャンチャンとおしまいにできるが、現実の人生はあそこで終わりじゃなくて、これからヨーロッパで薬を求めて彷徨うどん底のジプシー生活が何十年と続くのである。あのぬかるみを歩くような数十年こそもっともつらく、チェットらしいといえばチェットらしい。

 彼は人気があるから、ファン心理としてはカッコいい男だと思いたいだろうし、「本当は優しい奴なんだ」とか美しい勘違いをしている人も多いけど、もう本当にろくなしの極みみたいな男なのである。そしてそのろくでなし加減が、またなんともジャズっぽいというかジャズの本質をついているのも事実。

 同じくトランペッターであるウイントン・マルサリスが、うまいけどあまりジャズを感じないのは、彼が真面目でクリーンでちゃんとしすぎているせいだろう。恨み、挫折、やるせなさ、どうしようもない閉塞感、ジャズはやっぱり日本で言うところの演歌に近いのかもしれない。


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