コントラストとダイナミックレンジ

 先日、録音技師のルディ・ヴァン・ゲルダーが亡くなったことを書いたけれど、ヴァン・ゲルダーといえばブルーノートレコード。ブルーノートといえばフランシス・ウルフの写真にリード・マイルスのジャケットデザインである。コントラストの濃いモノクローム写真に大胆なタイポグラフィーで、ハンク・モブレーの『ソウル・ステーション』みたいなこんな感じ。

 一方、西海岸のコンテンポラリーレコードはロイ・デュナンの録音で、ウィリアム・クラクストン撮影のカラー写真が特徴的。こちらの『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』を例に挙げよう。
 ブルーノートやプレスティッジが、なんとなく「真夜中に録音したのではないか」というイメージがあるのに対し、コンテンポラリーやパシフィック・ジャズは「昼間の明るいスタジオで録音したのではないか」と思わせるのだ。もちろん実際は何時に録音したのかわからないけれど、東海岸(ニュージャージー)西海岸(ロスアンゼルス)それぞれジャズレコードの印象が確立している。

 それは写真だけでなく、レコードに針を落とすと出て来るサウンドに呼応している。ブルーノートすなわちヴァン・ゲルダーの音は、ダイナミックレンジの幅を抑え、ぐっとエッセンスを圧縮した陰影の濃いサウンド。
 ロイ・デュナンの音はすっきりと見通しが良く、細かいディテールまでわかる明るいワイドレンジなサウンドだ。そう、西海岸・東海岸はジャケット写真のコントラストとぴったり合っている。

 レンジを狭くすると体感できる音量が大きく、ピントがはっきりして迫力があるサウンドになるが、写真でいう影の部分は潰れてしまうため、細かい部分が犠牲になる。
 ダイナミックレンジを大きくとってフォルテシモからピアニッシモまで欲張れば、当然ながら全体の音量は小さくなってしまう。コンテンポラリーレコードの音が他よりも小さく感じるのはそのためなのだ。


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