ジャズに日本を教えてもらった

 山本邦山&菊地雅章の『銀界』は日本的旋律に基づくモードジャズの傑作だ。モードジャズとは簡単に言うと、コード進行に沿ってメロディを展開する西洋音楽の形でなく、決められた音階(スケール)に基づいてアドリブを展開していくもので、音楽用語で旋法と呼ばれる。マイルス・デイヴィス&ギル・エヴァンスの『スケッチ・オブ・スペイン』がスパニッシュのスケールを使ったモードジャズで、見事にスペインの雰囲気を醸し出しているが、あれの日本版に当たるのが『銀界』と言ってもいいだろう。

 尺八をフューチャーした和洋折衷ジャズであるのに、まったく色物的な感じはなく、極めて芸術的で格調高い作品になっているのは、アメリカ人ベーシストであるゲイリー・ピーコックの参加に依るところも大きい。海外の客観的な目で見た日本的な良さが反映されていて、なおかつ一流ジャズマンの審美眼を通した深い理解を伴っているのである。アメリカ人がこんなに日本の良さを理解しているのに、日本人の自分がちっとも日本の良さを理解してない。わたしは『銀界』を逆輸入するような気持ちで聴いて、日本の良さを再発見した。ジャズに日本を教えてもらったのである。


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