マイルスのボランティア

 ボランティアといえば、思い出すのが1964年2月12日にニューヨークのリンカーンセンター”フィルハーモニック・ホール”で行われたマイルス・デイヴィスのチャリティーコンサート。その模様は『フォア・アンド・モア』『マイ・ファニー・バレンタイン』という二枚のレコードに収められている。
 「なあマイルス、オレの金をくれよ。オレはお前ほど稼いじゃいないんだ」
 ノーギャラでの出演を渋るメンバー達を押し切るような形でコンサートは開演。メンバー間に張りつめる異様な緊張感。やけくそで無茶苦茶な演奏をするのかと思ったら、凄い凄い!もうホールの天井を吹っ飛ばしそうな勢いだ。『フォア・アンド・モア』で大暴れするトニー・ウィリアムスを聴いた青年は、昭和51年、天王寺に自ら開店するジャズ喫茶を「トップシンバル」と命名した。
 ルーチンでやる演奏と、ノーギャラでの演奏。マイルスには似通った内容のライブ盤が何枚もあるけれど、『フォア・アンド・モア』と『マイ・ファニー・バレンタイン』が飛び抜けて凄いのはノーギャラのボランティアだったことと無関係ではあるまい


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