潜水中に息抜きはできない

 好きで好きでたまらないことを職業にして食っていけたらどんなにいいだろうと、誰もが一度は思うだろう。プロ野球選手、ミュージシャン、俳優、漫画家、いろんな花形職業があるけれど、憧れの職業に就ける人はほとんどいない。世の中の大半の人たちが、夢見ていたのとは関係のない仕事をすることになる。
 だが、それは一方で救いでもある。自分の稼いだ金を存分に好きな趣味につぎ込むことができるのだから。

 趣味を仕事にするということは、言い換えると、その趣味をひとつ失うことでもある。息抜きにしていたかけがえのないひとときを、生活の糧と引き換えにすることなのだ。
 わたしは迂闊にもジャズとオーディオとブログを仕事にしてしまった。息抜きにしていたこれらの趣味を現金に替えるという挙に出たのだ。いくら好きなことでも、いざ仕事となると話は別だとは気づかずに。

 そこそこ文才があり、コラムでも書いて小遣い稼ぎできないかなと思ってるブロガーは多いと思うが、趣味で好きなことを書くのと、原稿料をもらって書くのとでは大違いだということにおそらく気がついてないだろう。小説家の大沢在昌氏は、原稿を書くのは息を止めて深く潜水するような感覚だと書いていたけれど、読者の息抜きのエンターテイメント作品を書くために、作者は息を止めて深い水の底へ潜る。仕事とはそういうものなのだ。

 「好きなジャズ聴きながら仕事できていいですね!」とは、自動車の営業マンに「新車に乗れていいですね!」と言うようなもので、じつはそれ自体それほど楽しいわけではない。仕事中は、良い仕事をすることに集中しなくてはいけないからだ。音楽鑑賞としてならば、犬の散歩をしながらiPodでモータウンでも聴くほうがずっと楽しい。趣味を仕事にするということは、趣味を失うことであり、大きな大きな代償を支払うことなのである。


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