趣味の極意

 趣味とは、金と時間を投入して、わざわざ面倒なことをやる、そのプロセスを楽しむものであるが、仕事とは、他人の面倒を解消して対価を得ることだ。この両者は、一見、当たり前のように見えることだが、意外とそれが頭の中で整理できてないことが多いのだ。

 プラモデルが趣味の人に、自分の組み立てようとしているのを勝手に完成させてしまったら、いくら上手に出来たって、そりゃあ怒るだろう。
 また、釣りが趣味の人なら、名人に自分の竿で大物を釣ってもらっても、それほど嬉しくないだろう。やはり、自分で手応えを感じ、自分の手で釣るから楽しいのであって、獲物だけもらって嬉しいのは奥さん連中だけである。

 オーディオマニアだって、自分の力でなんとか良い音を出そうとするのが楽しいのである。音の達人にパパパパッと良い音にしてもらっても、達成感というものがないではないか。稚拙であっても、自分の手でやるから面白い。仕事には妥協がつきものであるが、趣味である限り、一切の妥協はありえない。本業の仕事で稼いだ、許す限りの財産を投入し、心ゆくまで面倒なことを楽しむのが趣味の極意。

 ところが、自分のことは棚にあげて、音楽を楽しむべし!みたいなことを言うオーディオマニアはけっこう多い。音を聴かずに音楽を聴けなんて、まったく余計なお世話である。オレの趣味を奪う気か!?といって、もっと怒らなくてはいけない。面倒くさいことをするのが楽しみなのに、早道を教えてどうする?横からパズルの答えを言うような奴はあっちへ行ってくれ!と。

 しかしマニアとは、訊ねてもいないのに、誰かに自分のやり方を教えたくて教えたくてたまらない、じつにおせっかいな人種でもあるのだ。自分は教えてほしくないのに、他人には教えたい、どうですこの自己矛盾。

 最近になって、わたしにもようやくそれがわかりだした。そしたら、他人様にああしろ、こうしろとも言えなくなった。みんな、それぞれ自分のやり方で楽しんでいるのだ。もし仮に、全部わたしの言うとおりにしたところで、人格が立派になるわけでも、素晴らしい音が出るわけでもなし。せいぜい今鳴ってるこの音が関の山だ。趣味人に余計なことは言わないに限る。


« SPリベラメンテ近日発売 | メイン | レニー・デイル(vo) 『Um Show De Bossa...』 »