七色の珈琲

 今年もアイスコーヒーの季節がやってきた。毎年、作って冷蔵庫で冷やしていたものを、コップに注いで出すというオーソドックスなスタイルだったが、今シーズンは、ちょっと作り方を変えてみようと思い立った。

JimmyJazzの新しいアイスコーヒー

 高校生の頃だったと思う。大阪の心斎橋筋商店街に、「MJQ」ならぬ、「MJB(エム・ゼー・ビーとルビがふってあった)」というコーヒー専門店があり、いかにも喫茶店といった店内の格調高い雰囲気が気に入って、よく通ったものだった。
 ある暑い夏の日、いつも「MJB」でホットコーヒーを頼んでいたわたしは、初めてアイスコーヒーを注文した。すると、細かな氷がいっぱいに入ったカップが運ばれてきて、なんだなんだと思っていると、ポットを持った蝶ネクタイのウエイターが、氷の上にドバドバと熱い湯気の立ったコーヒーを注いでいくではないか。

 ポカンと口を開けて見ていると、蝶ネクタイのウエイターは会釈して引っ込んでいった。恐る恐る飲んでみたら、これがじつにいい香りがして美味い。出来たてのコーヒーを、氷で急激に冷やすことで香りが逃げないのである。アイスコーヒーとは、冷蔵庫で冷やしたものに氷を入れると思っていたわたしには、ちょっとしたカルチャーショックだった。

 当店で、この淹れ方をするためには、ぬるくならないたっぷりの氷と、氷が溶けることを計算に入れた濃いめのコーヒー、これらを絶妙のバランスで抽出しなくてはならない。ホットコーヒーだけでも上手に淹れるのは大変なのに、我ながら御苦労なことである。

 ちなみに、この「MJB」心斎橋店は、奥に「図書室」と書かれた、照明の明るい部屋があって、そこで雑誌「ポパイ」を初めて目にして、Master少年はファッションに目覚めたのであった。
 それにしても、あのときのアイスコーヒーより美味しいコーヒーは未だかつて飲んだことがない。心斎橋店はとうになくなったが、淀屋橋店はまだ健在。そうだ、今度の休みには、久しぶりに「MJB」の「七色の珈琲」を飲みに行こう。


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