Monthly Archive 2024年11月27日

ドライビングファッション

 教習所に行くのは週一度、休日のみと決めている。1日に取れる授業は三時間だから、1時限目9時10分と2時限目10時10分を連続で技能教習を受け、一時間休憩して4時限目12時10分(連続三時間は乗ってはいけない)に乗るのが理想的なパターンだが、教習生が多くてなかなか予約が取れない状況だ。受付でキャンセル待ちの表に名前を記入しておくと、ドタキャンで来ない教習生が出た場合、教習を受けることができるが、キャンセルが出ないと待ちぼうけを食らうこともある。

 キャンセル待ちしてる間に、教習所の道路向かいにある2nd Streetで時間を潰してたら、ずっと欲しかったバブアーのビデイルジャケットを発見!サイズぴったりで状態も良いので衝動買いしてしまった。冬場はロングコートを着ることが多かったが、膝丈のコートでは運転しづらいだろう。ハーフ丈のバブアーならドライブにピッタリだ。

 服装といえば、教習所に行くときは、たいていジャージとスニーカーである。休日だからリラックスしてるのではない。教習手帳に「動きやすい格好で。スカートやサンダル履きは不可」と書いてあるからだ。さすがにスカートこそ穿かないが、教官に教わる立場であるからきちんとルールを守って好感の持てる服装で教習に臨むのが大人の態度だろう。んっ?もしかすると教習所職員が妙に親切なのは、ジャージ姿の還暦前のオッサンが逆に怖い人に見えてるのかもしれないな(^^;

 無事に午前中の教習を終えると、送迎バスには乗らず、多目的トイレでショートパンツに着替えてそのままスーパー銭湯までランニングするのだからますます怖い。京阪神のこの辺りは天然温泉が多く、教習所から周囲5キロ前後の距離に5ヶ所もスーパー銭湯がある。そこで遅めの昼食を摂り、サウナでまったりして夕方電車に乗って帰路に着く。これまでの生活パターンに教習所がくっついただけかもしれない( ̄▽ ̄;

(つづく)

年寄りだからしょうがない?

 400ccのオートバイを降りて29年になる。以降全く運転してないから、その間にできたセルフのガソリンスタンドもETCも未体験、何より四輪の知識もゼロに等しい。

 刑事ドラマで「犯行に使われた車は黒っぽいセダン」なんてセリフがよく出てくるが、セダンとクーペの違いすらわからない。そんなズブの素人が習おうというのだから大変だ。

 還暦が近いということは、現役でバリバリ働いてる人間はほぼ年下ということである。教習所の教官も例に漏れず、(年上かなと思える先生もいるにはいる)高圧的な態度の人に当たって嫌な思いをしたことはない。

 女性の事務員さんも親切だし、送迎バスの運転手は乗り降りの際に小雨が降ってくると「ささっ、どうぞこちらへ」と傘を差し出すVIP待遇。

 教習所といえば、昔の「暗くて薄汚ない校舎に横柄な態度の教官にブレーキを踏まれる」みたいなイメージだったが、今では施設も明るくキレイで感じのいい人ばかり。

 嫌なことといったら、技能教習の単位を落として自分の運動神経の無さにガックリすることくらいか(二輪免許があるので学科は免除)。

 現時点ですでに技能4時間の超過料金が発生しているが、料金云々よりも、できないことに対して「年寄りだからしょうがない」と思われるのが悔しい。年取ってるからどんくさいんじゃないぞ!わたしは元からどんくさいのだ!!( ̄▽ ̄;

(つづく)

ペーペードライバー

 社会人として半人前のペーペー、「まだまだ一人前とは言えない、修行が足りてない、頼りない兄ちゃん」、30年前から全く変わってない自己認識だ。ぼちぼち同年代の人たちから定年退職や老後の話を聞くにつれ、いやちょっと待て、半人前のまま還暦を迎えるのは人としてどうなんだ?と焦りが出てきた。必要ないといえばそれまでだが、普通免許を持ってないというのも半人前的といえば半人前的である。

 さて、皆さんにとっては免許を取るなんて珍しくもなんともないのだろうが、還暦目前で半人前のオッサンが、いま教習所に行くとどうなのか。

 教習所に着いた。まず入所時に決めなくてはいけないのが料金体系。ミッション車かオートマ限定か。料金的にはたった7150円の違いなので、今思えばミッションにしとけばよかった気もするが、ミッション免許にしたら絶対にややこしいミッション車が欲しくなるという自覚があったので、あえてオートマ限定とした。後々ミッション車を買ってしまうとオートマ免許の家族全員が運転できないからだ。

 前もって数万円払っておけば技能時間が伸びても追加料金のかからない「安心パック」という制度もあるようだが、なぜだかわたしが申し込む際には全く説明がなくスルーされた。「40歳~:ご相談ください」と書いてあるのに。まあおそらく勧められても入らなかったと思う。

 写真撮影と視力検査を終えると、

「ちょっとその場で屈伸してみて下さい」と若い女性の事務員さん。

 屈伸??なんだなんだやぶから棒に?ははあ、年寄りだからひっくり返るかどうか見るのだな?クイクイっと。これでもおととしは富士山に登頂したんだぞ!と口には出さないが、老人扱いされて少しショックである。

 朝から夕方までしか教習車に乗れないデイタイムプランと夕方以降も乗れるフリープラン、これもたった7150円の違いであるが、週一回、休日の午前中に行くためデイタイムプランを選んだ。急いで免許を手に入れるのが目的ではない。「習い事」感覚で先生に教わり、教習所通いを楽しむことが大事なのだから。

(つづく)

いい日旅立ち

 2023年10月にはシンガーソングライターの谷村新司が亡くなった。享年74歳。少年時代、同氏がパーソナリティを務める深夜ラジオ「MBSヤングタウン」を聴いて、ちっとも勉強しなかったわたしだったが、あんなふうに歳を取りたいと思える数少ないお手本の一人だった。

 テレビの追悼番組で、氏が69歳で教習所に通って自動車免許を取得したと知った。確かに彼はクルマよりバスや列車の旅が似合う作風だったが(一旦取得したが’70年のアメリカツアー中に失効)、そういうことだったのか。

 69ともなればそろそろ免許返納を考える歳なのに、それより10年若いわたしがやってできないはずはない!

 実際、還暦を目の前に控え免許を取ると言ったら家族全員が呆れていたが、「谷村新司は69で免許を取った!」と言ってなんとかうまく丸め込んだ。

 無謀な挑戦にビビりつつ、自らを鼓舞するために図書館で谷村新司の著書『本当の旅は二度目の旅』を借りて読んでいたら、最後のページに興味深いくだりがあった。

“——— ぼくは七〇、八〇になっても、おそらく自分なりの歩幅で走っているでしょう。そしてピンクのシャツを着ているジイさんになってるんじゃないかと思う。ピンクのシャツを着て、スニーカーを履いているジイさんかな、みたいな気がします。で、きれいなオープンカーのスポーツカーに乗って、真っ黒に日焼けして走っていたい。七〇くらいになっても女の子にチョッカイを出しているおじいさんでいたいのです。———”

 ちなみにこの本は1993年10月発行、ということは谷村44歳ごろの著作なので、当然のこと書いたのは免許失効中である。

 74歳で逝った谷村の、きれいなスポーツカーに乗り女の子にチョッカイを出す夢は叶ったのだろうか。

 遅ればせながら、わたしもその夢継いでみたい。ピンクのシャツを買って、いい日旅立ち、なのである。

(つづく)

車が無くて男と言えるか

 半ば発作的に教習所通いを決めたように見えるが、これまでの伏線と思しきものが積み重なってきて、表面張力を破り一気に溢れ出したのかもしれん。

 1986年公開の映画「クロスロード」を観たことあるだろうか。ラルフマッチオ演じる少年が、ブルースの始祖ロバートジョンソンの残した幻の曲を探すというロードムービーだ。

 幻のその曲を知るブルースマンのフルトンは老人ホームに収容されていて、電動車椅子で施設内を移動する。

「歩けることがバレたら車(椅子)は没収だ!車が無くて男と言えるか!?」

「おまえ、車はあるか」主人公ユージーンが首を横に振ると

「まだ男じゃない」

 今はNetflixでも観れるこの映画を、ロードショー時に和歌山市までオートバイを駆って観に行った。注目度が低く、大阪では上映が無かったのである。

 あれから40年近い歳月が過ぎた。「ブルースマンの締めるストリングタイ」は手に入れたが、わたしは未だ「大人の男」になれていない。

(つづく)

還暦間近だ免許を取るぞ

 新シリーズ始まりますw

 いくら好きでも、休みのたびにディスクユニオンでジャズCD漁りもいただけない。一回も聴いてないCDだってどんどん溜まっているのだ。

 オーディオは気が済むところまでやったし、あまり上手くならなかったがリンディーホップも7年やった。近隣のスーパー銭湯も行き尽くしたし、いっそ新しい何か習い事でも始めようか。そうだ、どうせなら教習所へ行って車の免許を取ってみようか!?

 中型二輪の免許証はあるが、欲しいと思う四輪がなかったし、交通の便がいい所に住んでいることもあり、これまで免許を取ろうなんて考えたこともなかった。

 将来は偉くなって運転手つきの車に乗ってるはずだったし、自分で運転するなら、ギャングが機関銃ぶっ放しながら走ってるようなステップ付きのクラシックカー、”チキチキマシン猛レース”みたいなのがいいな、なんてふざけたことを思っていたのだ。

 その次の週、エントランスに”チキチキマシン猛レース”みたいな車が展示してある杭瀬自動車教習所の送迎バスの中の人となった。毎度思いつきで行動してるみたいで恐縮です。だけど、ほんの1週間前までまるで興味なかった方向に急ハンドルを切った自分にも驚いている(^^;

 偉い人たちに「人生は計画を立てることが大事」と散々聞かされてきたが、60年近く生きてきて計画通りになったことなんて一つもなかった。思いもよらない方向に、思ってもない展開が用意されて、どうなれば幸せなのかと迷いつつ行き当たりばったり、運命に翻弄され続ける我が人生であった。

 少年時代から将来の計画をノートに綴り夢を勝ち得た大リーガー大谷翔平のようにはいかないものだが、わたしももう59歳、還暦間近だ、免許を取るぞ!

(つづく)